横山秀夫の最新作、『ノースライト』は『64(ロクヨン)』等、過去の作品のような警察官を核にした重厚さは和らぎ、一級建築士の青瀬稔の過去と現在を往来しながら物語は進んでいきます。作品の軸でもある、青瀬が自身にとっての理想の家として設計したY邸の施主である吉野淘太の失踪にまつわる謎は読者を物語に世界観に誘う力があります。ただ、過去の作品に見られた、リアルで緻密な心理描写と比べると、どこか現実味に欠け、青瀬の思索にも感情移入できない面が否めません。巻末の謎解きも急に全てが明かされたのもありますが、驚きや納得感も感じられず、拍子抜けしました。作中に度々登場するブルーノ・タウトにまつわる話も作品の根幹といまいち交わらない気がします。
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