『半島を出よ』

村上龍の『半島を出よ』を十数年ぶりに手に取り、一字一句を食い入るように読み直しました。印象に残っていた箇所はそのままに、経年変化のように違った印象を受ける部分も少なくなかったです。佐世保の米軍基地を意識しながら形成されていった著者の精神は、日本の現状をリアルに、そして正確に捉えようとします。「日本」と言っても、国家は個人の集まりであり、この作品も「個人がどう生き残っていくべきなのか」ということが突き詰めたテーマなのだと思います。盲目的に外部を信じたり、最優先すべきことがなおざりにされたり、存在すべき対立が隠されていたり、予定調和的な日本、もっと広く表現するならばシステムの悪しき側面が描かれています。「才能とは異常な集中力」と考える村上龍がシステムの中でサバイブし、自己表現していくことが破壊的な結末につながるのだろうと感じます。北朝鮮の社会も滅私の究極であり、日本社会との対比を以前よりも面白く感じました。高麗遠征軍に同化していく福岡も、戦後の日本に重なります。カタカナで記された名もなき者たちが残した「お前が、やりたいことをやるんだ」という言葉は作品を象徴するに値すると思いました。

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