『パレード』

吉田修一の『パレード』『悪人』『怒り』等の作品と同じように、生々しい人間描写と内に潜む残忍性、残虐性、性悪さが登場人物たちに散りばめられています。その点が強調されているわけではありませんが、何気ない行動や思考に見え隠れし、鳥肌が立つような感覚を味わいます。ただ、多少の意識はあれど、それらは望むと望まざるとに関わらず、社会を生きる上で身に付いたものであり、現代社会の生きにくさが根底にあるのかと思いました。一見「まとも」な直輝の行動が最も逸脱していたり、「反社会的」なサトルが正直に悪をぶちまけながらも、性善に感じられたり、多角的に物語を捉えることができる、器としての深みを感じさせます。

コメント