村上春樹の最新作『騎士団長殺し』は喪失に向き合う勇気とそれに伴う成長の物語だと思いました。肖像画家として対面する事物、主に人間のペルソナのような何かを浮かび上がらせ、絵画に落として行く主人公を中心に、個と悪しきシステムの狭間で揺れ動く免色や成長途上の秋川まりえ等のキャラクターたちが淡々としていながらも、色濃い物語を形作っています。自分自身に向き合うこと、時に意識の「地底」へと降りることの重要性、流れに身を任せながらも、確固たる意志の力を感じさせる作品です。「どんなものごとにも明るい側面がある」、その言葉はその軽快なトーン以上に自分に力を与えてくれました。様々な解釈をすることができる作品ですが、勇気や希望等、ポジティブなトーンを残してくれます。
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