『悪人』

吉田修一の『悪人』、どこにでもいそうな人々の心の弱さと脆さを描いた作品です。「弱さ」と言っても字面から受ける印象よりも、それはとても内面的なものです。その差はあれど、登場人物たちの生き方から、ありのままの姿を出すことの難しさを感じました。弱さが善に振れるか、悪に振れるか、そういった心の揺れを見事に描いています。清水祐一や石橋佳乃等、主要な登場人物たちが一人称で語られないことも、読者の想像を促して面白いです。読み応えがありました。

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