Football Match Reviews for June and July

June
International Friendly Match
Switzerland 2-0 Japan
4バックに戻した日本。ガーナ戦の3バックのように暗中模索のような状況ではないが、狙いが見えない、選手任せのプレーは変わらず。他のワールドカップ出場国に比べれば総じて引き出しや臨機応変さがなく、戦略が極めて重要な日本にとっては悪夢のような状況。通り一遍の守備と崩しの工夫が皆無の攻撃。攻守に脅威を感じない。乾や酒井が入ってボールを前に運ぶ意識と多少の流動性は生まれたが、流し気味のスイスに簡単にあしらわれた。即解任のレベルでもおかしくない惨状。

2018 FIFA World Cup Russia
Russia 5-0 Saudi Arabia
密度の高い中盤の守備からカウンターを仕掛けるロシア。足元の技術はあるサウジアラビアだが、中盤から前にボールを運べない。ディフェンスラインも裏のスペースを突かれて、前半から失点を喫する。後半も状況は変わらず。中盤から前で起点を作れず、サウジアラビアは試合をさせてもらえない。ロシアは五分五分のボールでも競り勝ち、ゴールに向かって前を向き続ける。ロシアは大量得点を奪い、最高の出だし。

2018 FIFA World Cup Russia
Portugal 3-3 Spain
中盤に分厚い「防壁」を作るポルトガル。スペインにスペースと時間を与えない。そんな中でクリスティアーノ・ロナウドがPKを奪って先制に成功する。なかなか調子が出ないスペイン。ロペテギが解任された影響も想像されるが、そんな状況からコスタが独力で同点ゴールを奪う。後方からのロングパス一本で難局を打開。デ・ヘアの痛いミス、スペインらしくないセットプレーからのゴール、 穴と見られたナチョのスーパーゴール、クリスティアーノ・ロナウドのフリーキックも含むハットトリックと見所が満載。ワールドカップが本格的に始まったと感じさせる充実の試合内容。難局に立った際にチームのらしさを脇に置いて壁を破る個の力があるかどうか。目新しいことではないが、その重要性を再認識させられた。

2018 FIFA World Cup Russia
Morocco 0-1 Iran
ディフェンスラインから対角線、特にイランの左サイドバックの裏のスペースを突くモロッコ。決定機を何度も作るが、詰めが甘く、ゴールを奪えない。その後はイランも盛り返す。強さも速さも、フィジカルに優れた両チームの戦い。モロッコが優位に試合を進めるが、イランも集中を保って要所を締める。スコアレスドローで終わると思われた終了間際、セットプレーからモロッコが痛恨のオウンゴールを献上。イランは粘り勝ち、モロッコはもったいない敗北。

2018 FIFA World Cup Russia
Germany 0-1 Mexico
前回の大会でアルジェリアがドイツに対して見せた戦術を踏襲したかのようなメキシコ。前掛かりになって空いたスペースを素早く突いてフィニッシュまで持ち込む。ロサノが決めた先制点も見事な落ち着きぶり。後半はロイスが入り、攻め手を増やしたドイツが相手を押し込むが、集中力を保ってメキシコが対応。歴史的なアップセットが実現。ドイツは今大会も個性豊かな選手たちがプレー。しかし、印象としては核となる選手が不在で、崩しのアイデアも足りないように感じる。

2018 FIFA World Cup Russia
Argentina 1-1 Iceland
チャンスメイクからフィニッシュまで、基本的には全てメッシ任せ。負担が大きく、メッシを起用する上での最適解かも疑問。アイスランドは以前と変わらず、フィジカルの強さを前面に押し出し、カウンター、ロングボール、ロングスロー等、下手なボールロストに対するリスクを極端に減らした戦法。

2018 FIFA World Cup Russia
Colombia 1-2 Japan
波乱の幕開け。日本は相手を退場に追い込み、香川のPKで先制。コロンビアにとっては最悪のスタート。ただ、予想はしていたが、その後の戦い方があまりにも稚拙。シュートやビルドアップでのミス等、日本は素人のような失敗をこの舞台で繰り返している。選手間の距離も遠く、腰が引けている。どちらが有利な状況にあるか一目では分からない。後半に入って前を向く日本。スペースを生かし、縦パスが前線に入り、シュートまで持ち込む機会が増える。ディフェンスラインも高く設定。有利な状況を生かせないかと思われた中、大迫が貴重な追加点を決める。昌子が見せた安定感のある守備、柴崎の積極的で的確なゲームメイク、特に守備で見せた原口のハードワーク等、各選手が出色の出来を見せて勝利を引き寄せた。コロンビアはクアドラードを交代させたことが裏目に出たように思う。

2018 FIFA World Cup Russia
Poland 1-2 Senegal
堅実なポーランドと意外性のセネガル。マネやニアン等、技術、スピード、推進力を持った選手たちがポーランドを苦しめる。ポーランドはレバンドフスキ頼み。崩しのアイデアが足りない。得点はセットプレーからの一点のみ。セネガルの出足が鋭く、集団で吸い付くような守備を最後まで打開できず。

2018 FIFA World Cup Russia
Portugal 1-0 Morocco
勇猛果敢でより良質なサッカーを展開していたのはモロッコ。本当にクリスティアーノ・ロナウドがワンチャンスを決め、後は流したような印象。モロッコは何度もゴールに迫りながら、この試合も無得点に終わった。これが経験の差か。

2018 FIFA World Cup Russia
France 1-0 Peru
アドビンクラとカリージョの右サイドから積極的に攻め込むペルー。ただ、ゴール前までは持ち込むが、フランスの守備陣、単純にフィニッシュの精度が低く、決定機を作るまでには至らない。フランスは必要以上の力を使わず、豊富なタレントたちの個性を生かして、余裕の勝利。

2018 FIFA World Cup Russia
Argentina 0-3 Croatia
クロアチアの完勝。最後まで攻めの守備を貫いた。フィジカルと技術の高さを併せ持つ。メッシを消した守備が強烈。メッシを擁しながらも、余裕を感じさせないアルゼンチン。決勝トーナメントに向けて、非常に厳しい状況に追い込まれた。

2018 FIFA World Cup Russia
Brazil 2-0 Costa Rica
ブラジルは苦しみ抜いた末の勝利。序盤は前線が停滞。飛び出しが増えてから流動性も生まれ、ダグラス・コスタが入ってからは勢いがさらに加速。ただ、最後の最後までコスタリカの守備陣を崩せず、引き分けが濃厚と思われた後半ロスタイムに先制点を奪う。コスタリカはブラジルを相手に善戦。堅守と速攻の鋭さが印象的。

FIFA World Cup Russia 2018
Japan 2-2 Senegal
序盤からニアンやサールに自由にボールを運ばれる日本。圧倒的なフィジカル。またも原口と川島のつまらないミスから失点を喫し、日本は劣勢に立たされる。それ以外はしぶとく耐えていただけに残念。ただ、その後は挽回。勇気を持ってラインを上げ、長短のパスを織り交ぜて攻撃を展開。フリーランニングもしっかりとこなし、ディフェンスラインを上げて押し込んでいたからこそ、乾の同点ゴールが生まれた。その後は日本が押し気味に進めるも、決定機を決め切れず。特徴の違う両チームが見せた見応えのある攻防戦。日本は攻守に有機的で魅力に満ちていた。コロンビア戦のような数的優位もなく、あそこまで流れるようなビルドアップを披露するとは想像もできなかった。ただ、ゴール前での致命的ミスの連発だけはいただけない。

FIFA World Cup Russia 2018
Denmark 0-0 France
今大会初のスコアレスドローは凡戦と言っても差し支えない試合内容。無理をする必要がない両チーム。仕方ないが、集中を欠いたミスも多く、実際よりも時間を長く感じた。

FIFA World Cup Russia 2018
Nigeria 1-2 Argentina
後がないアルゼンチンは開始からフルスロットル。前線の名手たちが今までに見せたことがないような猛烈なプレスを仕掛ける。流れを引き寄せ、メッシが先制にも成功する。ナイジェリアは勢いと雰囲気に呑まれてしまったような印象。ただ、中盤の組み立て役がおらず、マスチェラーノやメッシへの負担が大きい問題点は変わらない。微妙な判定のPKから同点に追い付かれる。その後は攻めても攻めても打開できず、万事休すと思われた後半終了間際、ロホの決勝ゴールによって勝利を手繰り寄せる。ロホのハンドも含めて、山あり谷ありの劇的な内容。

FIFA World Cup Russia 2018
Japan 0-1 Poland
日本は報道の通り、大幅に先発の選手たちを入れ替えて試合に臨む。具体的な選手名も含めて、報道向けに漏れた事実は理解できない。先発してきた選手たちのリフレッシュ、控え選手たちのモチベーション、チームとしての一体感の維持が目的か。敗退した場合は批判の矢面に立たされることが容易に想像できる中、危ない賭けに挑んだ西野。使える選手とそうでない選手がはっきりとした試合。日本が終盤で見せた試合運びに関して、個人によって意見が違うのは仕方ないが、最重要である勝負に徹してここまで批判する一部のメディアや識者は本質を理解していないと感じた。刻一刻と状況が変わる中、その結果を得るためにリスクを承知で判断し、最良の結果を得た事実は揺るぎなく、合理的な判断だったと理解できる。16強の先を見据え、ベルギーを相手に好ゲームを演じてもらい、日本サッカーの地位向上につなげてもらいたい。

FIFA World Cup Russia 2018
France 4-3 Argentina
フランスのカウンターがとにかく印象に残った。アルゼンチンにボールを持たせ、奪った後はジルーに当てたり、ディフェンスラインの裏に空いたスペースにパスを出し、エムバペがゴールに突進する。一時は逆転したアルゼンチンも底力を見せたが、チームとしての完成度に開きがある。攻撃ではマスチェラーノに組み立て、メッシにチャンスメイクとフィニッシュを依存。守備でも中盤の広大なスペースをマスチェラーノがカバーし、ディフェンスラインも穴が多い。この試合に明確な狙いはあったのか。フランスは快勝と言える中、課題も出て、ポテンシャルを考えると余力を残していると感じられる点が末恐ろしい。

July
FIFA World Cup Russia 2018
Belgium 3-2 Japan
「日本らしく咲き、日本らしく散る」、シンプルな感想としてはその言葉に集約される。大会前の仕上がりを考えると、負けはしたが、残した結果も披露した内容も期待以上であり、合格点に達する。日本人の俊敏性を生かし、乾や香川等が細かくポジションチェンジを繰り返しながら敵陣に切り込み、不利と判断すれば作り直す、主導権を握るビルドアップとチャンスメイクは素晴らしいの一言。守備のリスク管理もこなしつつ、ここまでできるとは思わなかった。大迫や酒井宏等、日本人が劣るフィジカルや高さでも互角以上に渡り合い、逃げないことがポイントであることも再認識した。守備も健闘はしたが、毎試合失点を繰り返したことも事実であり、ここは改善の余地がある。南アフリカでのワールドカップや過去のアジアカップ等、日本には粘り強さを伝統とする堅守を持っていると思っていたが、攻守での両立はまだまだ難しいということか。この試合はやりようがあったと思うだけに、結果を見ると残念。引き出しの数を増やすべく、各カテゴリーとリーグで選手たちが経験値を積み、代表に還元されることを期待したいし、日本サッカー協会にはその流れがより円滑に進むよう、下地をさらに整備してもらいたい。

International Friendly Match
Japan 4-2 Paraguay
日本がワールドカップで見せた戦い方の原型はこの試合で形作られた。柴崎が中盤の底で大元の攻撃を指揮。乾と香川が高い技術に裏打ちされたコンビネーションを見せ、チャンスメイクからフィニッシュまでを担う。守備でも前線から相手のスペースを埋め、組織的な守備が垣間見られた。岡崎や武藤等もこの試合では攻守に躍動感を感じさせる。ただ、乾と交代した宇佐美が入ってから相手のサイドバックにスペースを与えた緩慢な守備を見るに、個人任せであることも見受けられる。

FIFA World Cup Russia 2018
Uruguay 0-2 France
ウルグアイが見せる球際の激しさは相変わらず。この守備が流れを呼び込む。中央を固めるウルグアイを前に攻めあぐねるフランス。個人で局面を打開できるエムバペ、近代サッカーにおいては貴重な存在。フランスは苦しむ中、セットプレーから貴重な先制点を決める。ウルグアイは突破口を見出せず、グリーズマンに追加点も献上。サイドからクロスを何度も放るが、スアレス一人では守備陣を崩せず、カバーニの不在が痛かった。

FIFA World Cup Russia 2018
Brazil 1-2 Belgium
序盤はブラジルがペースを握る中、ベルギーがCKからフェルナンジーニョのオウンゴールで先制。その後は引いて守るベルギー。ムニエがディフェンスラインに下がり、4バックを形成。アザール、デ・ブライネ、ルカクが見せるカウンターは驚異的。全員がボールを運べ、精度の高いフィニッシュに持ち込める。ブラジルは前線に動きが少なく、プレミアリーグのオールスターのような相手を前にスペースを作り出すことができない。終盤はスペースも生まれるが、決定機も決められず、万事休す。見応えのある攻防戦。ブラジルにとっては先制点が最後まで響いた。

FIFA World Cup Russia 2018
Sweden 0-2 England
ゴール前に壁を築いた両チーム。ゴールに向かう動きは基本的には空中戦の勝負ばかり。攻撃における引き出しが多かったイングランドに軍配が上がった。率直に言えば非常に退屈な内容ではあるが、こういった戦い方も個性であり、サッカーというスポーツの魅力。

FIFA World Cup Russia 2018
Russia 2-2 Croatia, 3-4 PSO
モドリッチとラキティッチとディフェンスラインの間に選手を配置し、二選手からのボールの供給を寸断しようとするロシア。ロシアは守備も意識し、ロングボールを多用したシンプルな攻撃が目立つ。時間の経過に合わせて、先に述べた二選手へのマークも甘くなり始める。オープンなゲームが展開される中、チェリシェフの鮮やかなロングシュートでロシアが先制に成功。クロアチアも前半の内にクラマリッチが同点ゴールを決めて追い付く。マンジュキッチは守備も含めて、ボールを運び、チャンスメイクまでこなす。その役割は極めて重要。クロアチアはサイドにボールを運び、クロスを何度も上げるが、なかなかゴールを割れない。延長に入ってCKからやっと決まったかと思えば、ロシアも食らい付く。PK戦までもつれ込む熱戦はクロアチアの勝利で終わる。モドリッチとラキティッチを擁する強力な中盤。
彼らが中心であることは間違いないが、決して労を惜しまず、チーム全体のハードワークを根幹で支えている。技術とハードワークの融合をクロアチアに見た。

FIFA World Cup Russia 2018
France 1-0 Belgium
当たり前ではあるが、両チームともに失点のリスクを強く意識していることが伝わる戦い方。ベルギーはデンベレを中盤に入れて強度を増し、守備時にシャドリがディフェンスラインに下がって4バックを形成する。フランスはより極端。相手のカウンターを警戒し、ボールを持つことを放棄するような格好。エムバペを中心としたカウンターに活路を見出そうとする。後半に入ってCKからユムティティがヘディングで決めてフランスが先制。ポグバがディフェンスラインに入り、フェライニに対応する等、勝利に向けてリスクケアをさらに徹底。ベルギーはフランスの分厚い守備ブロックを最後まで崩せす。非常にスペクタクルは少ない試合だが、ワールドカップの重みを感じさせるには十分な内容。

FIFA World Cup Russia 2018
Croatia 2-1 England
ロングボールからのポストプレー、スターリングを狙った縦パスからゴールを目指すイングランド。序盤にトリッピアーがFKから直接ゴールを決めて、リードを奪う。その後は守備ブロックを築き、クロアチアのクロスを跳ね返し続ける。クロアチアは疲れもあるのか、全体的に間延びし、個人に頼った展開が目立つ。後半に入っても流れが変わらない中、ヴルサリコのクロスからペリシッチがアクロバティックなゴールを決めて試合を振り出しに。その後はクロアチアが見違えるような動き。苦しい中でも息を吹き返したようにゴールに迫り続ける。イングランドは意気消沈したのか、中盤にスペースを空け、守備の強度も低下。マンジュキッチの逆転ゴールもそこに起因。選手交代をしても特に流れが変わることはなかった。インテンシティの高い試合を連続でこなしたクロアチア。フランスを相手にしても泥臭い試合に持ち込めるか。

FIFA World Cup Russia 2018
Belgium 2-0 England
半分はエキシビションのような一戦。準決勝までとは打って変わり、中盤にスペースも時間もある、オープンな展開。開始早々にベルギーのカウンターから失点を喫し、イングランドがボールを持って攻める時間が長く続く。失点したからではあるが、理想形としては普段のクラブでのプレーに近い、こういったパスをつなぐサッカーをしたかったのではと感じる。イングランドはゴールに迫るが、堅守の前にゴールは割れず。得点には至らなかったが、ベルギーが見せた後半34分のカウンターは組み立てからスペースの作り方、フィニッシュに持ち込む形までお手本のような素晴らしさ。

FIFA World Cup Russia 2018
France 4-2 Croatia
安定感のある中盤でのビルドアップからフランスのゴールに迫り続けるクロアチア。好スタートの中、巧みにファウルを得たグリーズマンの動きはさすが。そのままマンジュキッチのオウンゴールにつながり、フランスが先制。クロアチアもFKからこぼれたボールをペリシッチが蹴り込み、素晴らしい同点ゴールが決まる。カンテの守備を前にしても落ち着いた動き。VARによるグリーズマンのPKの後、試合の分岐点はカンテからエンゾンジへの交代。これによってフランスの守備ブロックには強固さと高さが加わり、ミッションが明確に。攻めるしかないクロアチアはより前掛かりになり、ディフェンスラインと中盤の間のスペースが緩慢に。勝負に徹したフランス。華やかさはないが、どこまでもサッカーというスポーツの勝敗に対して現実的に対応したチームだと思う。

コメント