『風が強く吹いている』

三浦しをんの『風が強く吹いている』、「走る」という行為を通じて見られる、登場人物たちの成長、気付き、発見に心を動かされる作品です。紆余曲折はありながらも、「速さ」ではなく「強さ」を追い求めることの大切さに認識した主人公の蔵原走。自分に勝つこと、他人の思いも背負うこと、成功を額面通りに捉えるのではなく、自分の価値基準で判断することの重要性を清瀬灰二との出会いを通じて気付きます。特に後半は登場人物たちの内面に潜む、心の機微を捉えながらも、簡単なようでいて難しいテーマを絶妙な筆致で描いています。夢物語であることは間違いありません。ただ、何かに一生懸命になることの素晴らしさを改めて感じさせてくれる作品です。感情を揺さぶられました。

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