奥田英朗の『イン・ザ・プール』、精神科医である伊良部一郎を主人公とした一話完結型の短編集。外から見れば、患者が抱える疾患は他愛もないように映りますが、本人にしてみれば重大でとても深刻。その原因は全員、凝り固まった考え方、他人の目を過度に意識することを原因としていますが、そこに気付かせるまでのストーリーがコミカルで面白いです。偶然か必然か、自由で極端な伊良部の生き方や行動を見て、徐々に回復に向かう展開はユーモラスで面白く、小気味の良い文章も作品にリズムを与えます。気楽に読める作品でありながら、示唆に富んでいます。
コメント
コメントを投稿