安部公房の『砂の女』、「全て」と表現してもおかしくないほどに、「砂」が持つ意味合いの深さ、多様性、人間社会に対する問いは読者を揺さぶります。砂に埋もれた部落に閉じ込められる男、過酷な環境から抜け出そうと何度も試みますが、最終的にはその中で生きがいを見つけて順応してしまう。労働とは何か、希望とは何か、所帯を持つとはどういうことか、社会の中で生きるとはどういうことか。完全な環境もなく、不完全な環境もない、社会というシステムの中で生きる個人の葛藤、満たされることのない人間という生き物の性質を描き、読者に新しい視点を投じる名作です。
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