横山秀夫の『顔 FACE』は『64(ロクヨン)』等、他の作品と同様に等身大の人間が生きる姿を丁寧に描いていることが素晴らしいです。主人公である平野瑞穂が男性社会である警察組織の中で生きる葛藤や苦悩、その中でも性別を超えて、一人の人間として自分を表現しようとする姿に力強さを感じました。また、どの人物が主人公になったとしても、物語として成立すると思います。それだけ、作品の中で描かれる一つ一つの心の機微やシーンはリアルで、「日常」が感じられることも魅力的です。つながりのある短編集ですが、どれも細かい伏線が最後には意表を突きながらも無理なく回収されていき、作家としての著者の技量を再確認しました。
コメント
コメントを投稿