横山秀夫の『ルパンの消息』は『第三の時効』や『64(ロクヨン)』等と比べると、高校生が軸となって進む作品だけに、ライトな印象を受けます。序盤は喜多、竜見、橘の三人が企てる「ルパン作戦」の決行までを描き、なかなか進展が見られないため、冗長に感じます。ただ、嶺舞子の殺人が実際に起こった後に物語のスピード感が一気に高まります。多くの登場人物の中で折り重なる謎の数々は非常に練られていて、最後まで読者を魅了します。著者の近年の作品には見られない、センチメンタルな雰囲気も感じますが、ミステリーの軸がしっかりと確立されている良作です。
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