沢木耕太郎の『深夜特急〈第三便〉飛光よ、飛光よ』は『深夜特急』シリーズの最終巻、イスタンブールからロンドンまでの日々が色鮮やかに描かれています。特に決まりはない、自由な旅ですが、著者は最初に決めた目的地であるロンドンが近くなるにつれて、旅の意味について考える場面が増えます。「たぶん、本当に旅は人生に似ているのだ。どちらも何かを失うことなしに前に進むことはできない・・・。」、「わかっていることは、わからないということだけ」。旅も生きるための行動であり、特別なようであり、特別ではないのかもしれません。ただ、「自由」であるということ、自らが歩き、考え、さまよい、対話を行おうとすることを強烈に感じられる、つまり「生きている」ことを体感し、それと同時に他者によって「生かされている」ことも感じる、そのリスクと裏腹の「自由」を沢木耕太郎は浴びていたような気がします。「禅とは・・・途上にあること・・・だと思う」、自由に自然に不完全に、巡り巡って、旅を表現する最も正確な言葉は「人生」なのかもしれません。
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