伊坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』は1963年に起きた、ケネディ大統領暗殺事件を下敷きとした逃走劇です。首相暗殺の濡れ衣を着せられた青柳雅春が警察やメディア等、実態が見えない社会の「大きな力」から逃げ続ける様子は追っ手への批判も含めて、滑稽でありながらも、理不尽さを覚えます。過去と現在が重なったり、多くの伏線が張られていたり、苛烈な設定の中でもどこか肩の力が抜けたようなストーリーの流れや文体は伊坂幸太郎の特徴と言えます。結末が気になって引き付けられますが、首相の暗殺や青柳雅春が追われる背景等、実態が見えず、リアリティに欠ける面を感じます。
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