貴志祐介の『悪の教典』は作中に展開される、残忍で惨い数多くの描写の割に、とてもライトで軽快な印象を受けました。面白い作品であることはもちろんですが、次の展開を気にさせる構成と筆者の文章力はさすがです。次々と入れ替わる視点により、あまり読者に感情移入をさせず、淡々とストーリーが流れます。主人公である蓮見聖司の狂いぶり、傍若無人ぶりは度を過ぎていて、罪悪感が全くないことから、コメディのようにすら感じます。『The Shining』のジャック・トランスや『The Dark Knight』のジョーカーを彷彿とさせます。その蓮見聖司ですら、良心の呵責によって悩む場面を描いていることが唯一の救いでしょうか。大量殺人が繰り広げられる前の蓮見聖司と片桐怜花、夏越雄一郎の攻防がもう少し見たかったです。
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