貴志祐介の『黒い家』は「身近な恐怖」を味わえる作品です。保険金殺人というテーマに派手さはありませんが、保険から生まれる「安心」や性善説を根底から覆すだけに、余計に狂気を感じさせます。主人公である若槻慎二の周りで起こる異常な出来事の数々は恐怖に満ちていますが、自身の安易な判断によって苦境を招いていたり、菰田幸子の行動も順調に進み過ぎている印象を受けました。面白いと思える要素の一つかもしれませんが、黒沢恵の人や犯罪に対する極端な考え方も含めて、著者の作品は細部に甘さを残しているような印象を受けます。ただ、読みやすく、読者に次の展開を気にさせるストーリーの面白さはさすがです。
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