『塩の街』

有川浩の『塩の街』は巨大な塩の結晶が空から落下して、引き起こされる塩害によって人類の存亡が危機に瀕するという、舞台設定の斬新さが面白い作品です。ライトノベルではありますが、肯定的に捉えれば「純粋さ」、否定的に捉えれば「浅はかさ」を感じさせます。個人的には人間の生々しさを感じることができれば、舞台設定の斬新さがより際立ったように思います。真奈が秋庭に好意を寄せる気持ちは分かりますが、秋庭が真奈に好意を寄せるに至った過程の描写がないに等しく、最後まで気になり、感情移入ができませんでした。ただ、とてもポジティブに人間を描く著者の作風はユニークで快いです。

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