池井戸潤の『空飛ぶタイヤ』は多くの魅力を持った作品ですが、リアルに「人」を描いていることが読者を魅了する最大の理由ではないでしょうか。決して経営に余裕があるわけではない、中小企業の運送会社が大手自動車メーカーや社会を相手に無実を証明していく過程は苦難の連続で、非常に苛烈です。ただ、会社を背負う社長、一家を背負う父親として、絶望の淵から、厳しい状況を打破しようとする姿勢は人間としての信念を感じさせ、非常に感銘を受けます。人を支え、人に支えられるからこそ、そこで紡ぎ出される物語には「熱」があるのだと感じます。それぞれの登場人物に守らなくてはいけない立場、目指したい夢、その間での葛藤があり、決して手が届かない人物ではなく、等身大のサラリーマンや企業人を描いているからこそ、共感を呼ぶのではないでしょうか。
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