野沢尚の『龍時 03-04』はこれまでの作品と大きく変わり、「監督」にスポットライトを当てた作品です。登場するオリンピック日本代表の平義盾夫が展開するサッカー論や日本人論は興味深く、著者の気持ちを代弁しているとすれば、改めて、野沢尚のサッカーに対する洞察力の高さを実感します。正に「奇跡」のような展開で志野リュウジとチームは決勝まで勝ち上がりますが、現実では難しいと思いつつも、薄氷を踏むような勝利の数々に読者は作品に引き込まれます。「日本人プレイヤーの最大の敵は、恐怖心です。恐怖のあまり、みんなで責任を負おうとする。そんな集団意識から抜けきれないのなら、恐怖心を含めた意識をうまく組織化するしかないでしょう」の言葉等、現在と将来の日本サッカーにも十二分に当てはまる、深い言葉や描写の数々が詰まっています。
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