貴志祐介の『新世界より』は物語の設定が奇抜で面白味を感じさせてくれる作品です。ジョージ・オーウェルの『1984年』やオルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』』等、ディストピア小説の大きな流れを引いていますが、「呪力」をテーマに取り入れていたり、漢字や伝統的な文化等、数多くの「日本的要素」を細分化して組み込んでいて、古くも新しさを感じます。描かれる世界はとても整然としていて、清められたような印象を受けますが、その裏に潜む混沌は現代社会が抱える問題にも通じていて、現代的なディストピア小説だと言えます。人種、性別、生物間の差別、個のエゴ等を徹底的に深掘った力強さを存分に味わうことができます。
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