『さがしもの』

角田光代の『さがしもの』は9つの短編小説の中で登場する様々な人物の時間や日常をそこに介在する本を通して切り取り、見つめた短編集です。登場人物や本の「個性」と同じように、描かれるシーンに一つとして同じものはありませんが、そこには必ず「気付き」、「成長」、「変化」が描かれ、本が持つ力を分かりやすく表現していて、非常に共感できます。人間は色々なものから経験を吸収しますが、アナログな質感や想像力をかき立てられる、活字や文体が持つ特殊な魅力は本ならではだと改めて実感します。『ミツザワ書店』のおばあさんが語る、「開くだけでどこへでも連れてってくれるものなんか、本しかないだろう」という言葉は自分自身の思いをストレートに表現してくれた言葉です。

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