『対岸の彼女』

角田光代の『対岸の彼女』は非常に淡々とした、生活感に溢れた、一見どこででも起こり得るストーリーを中心に進みますが、主人公である小夜子と葵の内面にどこまでも深く切り込んだ内容の厚さが印象的です。「隣の芝生は青く見える」、「羨望」、「立場」等の言葉を頻繁に思い出しました。個人が満ち足りない感覚や周囲や社会とのずれ等、誰しもが経験のある感覚を巧みに表現しているように思います。「女性の友情」という難しいテーマも、事細かに説明してはいませんが、分かりやすく断片をなぞっています。

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