村上龍のエッセイ、『「普通の女の子」として存在したくないあなたへ。』は一見、作品の趣旨とは無関係な著者のキューバでの活動を中心に言葉が紡がれています。『ダメな女』と同様ですが、「普通の女の子」はあくまでも例えであり、作品の対象は一般的な日本人と考えて差し支えありません。村上龍は思いを表現することの大切さを語りかけます。「普通」は社会が求める個性の平均と考えた場合、突出する存在ではありません。深堀りすれば、日本は外部を持たないため、表現する必要が総じて少ないとも言えます。「自分達のことを相手にも分かるように、表現して、その中に結果的に独自性が含まれる」という言葉や「依存」についての警鐘等、日本の土壌で生まれる特有の弊害をシンプルに表現します。願望や欲望を外部に伝えることは労力を要することではありますが、自然な行動でもあります。それらの要素は個人の存在意義等にも最終的に通じます。その行動を特に必要としない社会の特殊性を描いた作品です。
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