『羊をめぐる冒険』


村上春樹の『羊をめぐる冒険』は静かに込み上げる悲しさと切なさの中に不思議な爽やかさが内包された作品です。ストーリー構成や展開は非常にシンプルですが、現実的な物語の中に「ファンタジー」の要素も重なり、複雑さが生まれます。作品の中で不可解な部分も多々ありますが、終盤の鏡の描写等から鼠や羊男は僕を投影していると考えれます。他の村上春樹の作品でも登場しますが、主人公が髭を剃る描写がとても好きです。それはリセットの象徴であり、作品の爽やかさが生まれる要因でもあると思います。

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