『ノルウェイの森』


『ノルウェイの森』は村上春樹の代表作として世界中に知られていますが、著者の他の作品と比べ、非常に「現実的」な印象を強く持ちました。作品の根底に流れるシンプルでドライな雰囲気と相俟った「生と死」の描写がこの作品の最大の魅力ではないでしょうか。多くの登場人物が作中で命を落としますが、多くの読者はその中心で葛藤するワタナベトオルに自分を置き換えて共感を覚えるのだと思います。全体的に無駄を削ぎ落としたシンプルな印象が強いですが、登場人物の一人である永沢さんが発する数多くの発言に強く惹かれました。「自分がやりたいことをやるのではなく、やるべきことをやるのが紳士だ」や「自分に同情するのは下劣な人間のやることだ」等、強い個性を持った人生観に共感し、著者の違った一面を垣間見ることができました。

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