『奇跡的なカタルシス―フィジカル・インテンシティ II』


村上龍がサッカーを題材の中心として綴るエッセイ、『フィジカル・インテンシティ』シリーズの第二弾、『奇跡的なカタルシス―フィジカル・インテンシティ II』も他のシリーズと同様、著者の切れ味鋭い批評が興味深いです。興味深いと感じる理由は単純で、「言いたくても言えないこと」を簡潔に述べているからだと思います。サッカーの枠に収まらず、日本サッカーを通して見える日本社会の異質性を描いているから面白いです。現在でも頻繁に使われる「組織力でカバーする」というフレーズは日本サッカーの生命線です。日本サッカーに向けて文中で繰り返される「攻撃の形が見えない」というフレーズは象徴的で、「個人」が確立されていない社会がそのまま、その国のサッカー、特にサッカーで最も大事な得点への道筋に反映されている現状が映し出されます。2000年に発行されたとは思えず、読んでいる途中に何度も唸ってしまいました。

コメント