『すべての男は消耗品である。 Vol.10 大不況とパンデミック』


村上龍が最新のエッセイ、『すべての男は消耗品である。 Vol.10 大不況とパンデミック』の中で綴る言葉はどこまでも「現実的」であり、物事を俯瞰して捉えています。しかし、冷めたような目で世間を見つめながら、視点や言葉に非常に強い「熱」も感じさせます。それは著者の普遍的な姿勢なのかもしれません。エッセイの中で語られる「大手既成メディア」という言葉に集約されているように、日本という国自体が既に成熟し、行き場を見失っていることが論理立てて語られます。自身が『半島を出よ』の中で描いた世界が一部、現実のものとなりつつあり、著者が驚いていることがとても印象に残っています。

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