『半島を出よ』


村上龍の『半島を出よ』は徹底的なリアリティーを描きながら、日本という国に対する警鐘を鳴らす作品です。過去の作品に見受けられる、村上龍の普遍的なテーマですが、現実の世界と見比べてみても、著者の指摘の適切さに驚かされてしまいます。日本人が陥りがちな決定プロセスの遅延、責任の所在の曖昧さといったテーマが描かれています。しかし、結果として日本を救う、社会と距離を置いた人たちが、「楽しいというのは仲間と大騒ぎしたり冗談を言い合ったりすることではなく、大切だと思える人と、ただ時間をともに過ごすこと」と言い切れるポジティブさがとても印象的でした。

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