『走ることについて語るときに僕の語ること』


村上春樹が書き上げたメモワール、『走ることについて語るときに僕の語ること』は著者の精神に触れることができる作品です。『村上朝日堂』のように、『走ることについて語るときに僕の語ること』は「走ること」を通じて村上春樹の「書くこと」に対するストイックな姿勢を垣間見ることができます。肉体的な研鑽を通じた充足感や日々の地道なトレーニングの積み重ね等、人生の道程を「走ること」に置き換えている表現が多く見られ、共感を覚えます。「苦しいからこそ、その苦しさを通過していくことをあえて求めるからこそ、自分が生きているというたしかな実感を、少なくともその一端を、僕らはその過程に見いだすことができるのだ。生きることのクオリティーは、成績や数字や順位といった固定的なものにではなく、行為そのものの中に流動的に内包されているのだという認識に(うまくいけばということだが)たどり着くこともできる。」という言葉に村上春樹の人生に対する姿勢が凝縮されているように思います。

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